





















今年の山開きは大盛況で、かつてない14人もの大人数での開催となった。上関のバス停でバスを降りた頃は風もなく穏やかな春の太陽が輝いていた。新茂智神社の前の池は穏やかに春の新芽を膨らまそうとしている木々を写しだし、時折木の葉が落ちて水面に笑窪を作っている。数年前までは真冬に山開きをやっていたが、その当時は池の水が硬く凍り付き、通りがかった人が面白半分に投げた石が点々と池ノ上に転がっていた。さくさくと落ち葉を踏んで軽やかに談笑しながら林道を行き、そろそろ狭い登山道に近づいたかと思う頃、Nさんが林道脇の竹やぶで持参のノコギリを使って杖をつくりだした。ストックの無い人のために数本つくり、もらった人はその杖に今日一日お世話になる。登山道に入ると勾配がきつくなり、人数も多いだけ列が長くなる。汗もでてきて息づかいも荒くなる頃いつも休憩する展望のきく大きな岩の場所に着いた。前方の下に広がる大石の集落は来るたびに家が増えているようだ。その大石のすぐ横を流れる瀬田川が大きく蛇行するあたりに厄除けで有名な立木観音がある。瀬田川の右岸のすぐ側から700段の石段を上ったところにある古刹だが、ここからはわずかに屋根が見え、耳を澄ますと参拝客の突く鐘の音が、時々思い出したように瀬田川を渡り余韻を忘れて伝わってくる。10分程の休憩のあと山頂まではあと少しの頑張りである。突然登山道をぶち切るように、数年前に出来た林道を横切り、両手も使うほどの勾配の登山道をよじ登ると小さな木作りの鳥居がある。それをくぐり山肌をやがて左に這いつくばるように曲がり登っていくと、白山権現の祠が祭ってある。その祠の上が笹間ヶ岳の山頂(433m)である八畳岩だ。以前はこの山頂の八畳岩に上るには岩の出っ張りや割れた所に、手足をかけて上るロッククライミングが必要だったが、今は梯子や鎖が整備されて安全に上れるようになった。さすがに山歩会のメンバー十数人ともなると山頂は狭く、いつまでも居ると他の登山客に迷惑がかかりそうだ。山頂からの眺めは素晴らしく、北西には琵琶湖の向こうに山頂が雪で真っ白な比良山系が望まれ、東北には三上山や金勝アルプスの山並みが広がる。そこからは本日のメーンエヴェントである山開き会場の行われる大谷河原までは風化した花崗岩のやせ尾根を小さなアップダウンを何度か乗り越え下っていく。一頃このあたりは風化した花崗岩が露出し山全体が白く、大きな木が殆んど無く奇岩や巨岩の立ち並ぶ特異な風景が広がっていたが、これは古来多くの木を平城京の造営などの用材に伐採したために荒れた山になっていったという。近年その破壊された山の自然を取り戻すために植林が行われてきており、2.30年前にくらべてすっかり山も緑に覆われてきたが、その工事のために山頂近くにまで道路を作ってしまったのは何かがおかしいのではないだろうか。自然を取り戻すために自然を破壊する行為は絶対に許されるべき事ではないと思う。大谷河原は平坦な砂地で途中より山から流れてきた水が伏流水となり広場の端のほうに小さな池ができている。そこへは調度12時に着いた。着くとすぐに、その広場の端に持参のシートを広げて宴会場つくりである。今回の献立は鴨鍋。会員個々が寸法に気を使いながら持参した材料を手際よく吹田町鍋奉行が鍋に入れて仕上げていく。お酒も入り段々と盛り上がり、太陽が出て暖かかった広場もいつの間にか曇ってきて、雪がちらつきだす。久しぶりの山開きでの雪見酒となり、寒さも忘れてめったに見ることのない雪の降る山の風景とお酒に酔いしれる。Uさんの裕次郎節が出だした頃はすでに3時近くになった。帰り支度をして山を下りる頃は粉雪がボタン雪に変わり、瞬く間に周りが白銀の世界に早変りしたと思ううちに、やがてそれは幽玄の世界へと変化した。事のほか御仏河原の少し先の、岩肌を滑り落ちる水がつくる谷川のあたりの眺めはこの上なく素晴らしいもので、ただ、足早に通り過ぎていくのが勿体無いくらいだった。景色に見とれて転ばないように足元に注意しながら天神川まで下りてくる。ここからは天神川沿いの林道をたんたんとバス停まで下る。今年は皆さんの足取りはしっかりして、誤ってせっかくの収穫物をゴミとして捨てられたなどの過去の経験を心配せずに帰れそうだ。バス停に着いて時間を見ると50分の待ち時間がある。そこで飲み残したアルコールがあるので二次会をしょうと言う事になり、バス停の横の天神川の土手で雪のちらつく中での宴会が始まった。時間はあっという間にすぎてバスに乗り込み石山駅へ向かう。雪もやみ薄っすらと色づいた夕暮れの雲がゆっくりと流れている。石山でJRに乗りこみこのまま家に帰るのも何だ?と有志で京都駅で降りて近くの居酒屋で三次会を開く。ここでも楽しく雑談などでひと時を過ごし、日ごろのストレスもすっかり回復したようで、明日から頑張るぞと店をでた。楽しく愉快に和やかに山歩会の皆さんと過ごした一日もあっという間に終わった。お疲れさま。